とあるIT屋の独白

ITや経営について主に書きます

デザイン思考と不確実性

前にこのブログにて、DXがさけばれてる現代で、「デザイン」の考え方が重用なことに触れました。

toaruit.hatenablog.com


ここでいうデザインとは、UXに近い考え方で、「ユーザーがうれしいと感じる体験となるように、製品やサービスを企画の段階から理想のユーザー体験(UX)を目標」にすることを指すものとします。
UXを追求していくことが極めて重要なのは、あらためて言うまでもありません。ただ、それだけを追求すれば競争優位を保てるかと言うと、そうでないケースはあるでしょう。例えば資本力がある企業が参入しより洗練されたものが作られたり、ChatGPTのようなゲームチェンジャー的なのが出てきたらユーザーが求めるものが変わることもあります。また、デザイン思考が広がるにつれて、以下の記事で触れられているような、

www.technologyreview.jp

時を経るにつれ、意味のある変革を実現することなく一連の項目にチェックを入れるだけの「イノベーション劇場」が企業内で常態化し、事例研究で取り上げられたさまざまな社会的インパクトのある取り組みが、試験プロジェクトの枠を超えられずに苦戦

手法的な論点に偏りがちな面は、やはりあるかなとは感じます。
さて、少し観点を変えて、果たして現状接しているユーザが、自身の欲しいものをきちんと認識しているかという点はあると思います。ユーザーヒアリング等を行なったものの、状況があまり変わらないような場合は、この観点を持っても良いかなとは感じます。今は基本的なモノやサービスは市場にある状況とは思うので、以下の記事にあるような、

markezine.jp

リアル店舗かECかという話にとどまらず、モノを買わない生活者といかに接点を築き、購買行動へ導くのかが今後、深く考えていくべき

という考えは、大事になってくると思います。
新しいユーザ層と接点を持ったり、既存ユーザーのユースケースを発掘することはデザイン思考のアプローチでも不可能とは言いませんが、個人的にはデザイン思考は不確実なものを確実に近づけるのに有効なアプローチと考えています。なので、ユーザーのストーリーを考えたりペルソナを作ったりすることで、自分達が不確実と考えているものを深く分析する作業を行います。
ただ、ある程度自社のプロダクトやサービスが成熟すれば、今度は逆に不確実性を高める必要がある状況になると考えます。以下の記事で触れられているような、

atmarkit.itmedia.co.jp

分からないことを自ら増やすのは選択肢を広げることです。効率化への最適化を進めると、じょうご状に先が狭くなりますが、そこであえて選択肢を広げ、じょうごの先を広げる。顧客を広げたり、ユーザーの対象を変えたり、新しい課題やニーズを探したりする。プロダクトが若者向けメッセージアプリだったら、世代を変えたり、メッセージだけでなくコンテンツ提供や決済機能を提供したり、医療やコマースなどまったく新しい領域に飛び越えたり。

ということを意識的に行わないと、競争優位を失うことになるリスクは今はかなりありうるかなという気はします。
事例を挙げると、以下の記事にある、ストロー生産を行っている「シバセ工業」が近い感じかなと考えています。シバセ工業は、プラスチック削減の政策やコロナの影響を受けて飲食用のストローの受注が減っている状況でした。ただ、工業用や医療用といったところに目を向けて、新たな顧客やユースケースを模索することで、会社をV字回復させていったという内容になります。

president.jp