とあるIT屋の独白

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小林製薬の紅麹事案とガバナンスについて考えてみる

ここ最近、世間をにぎわせている小林製薬の紅麹の事案。この記事を書いている時点でも、まだ調査中とは思いますが、それなりに情報も出てきてるような感じがするので、一度所感など書いてみたいと思います。
紅麹の件について、大まかな時系列は以下の記事にあります。2024年の前半に小林製薬へ医者からの問い合わせがあり、調べたところ想定外の物質が含まれていそうとのこと。

www.asahi.com

そもそもこれは運悪くこのような事案が起きたのか、管理の不備による起きたものなのか。以下の他社の声明を鑑みるに、たまたま小林製薬の運が悪かったという感じではない、というのが私の所感です。小林製薬において、何か業務オペレーションに不備等あったのでは、という感じはしています。

nlab.itmedia.co.jp


今回の経緯を今一度振り返ると、医者からの問い合わせがあってその後に調査した結果、想定外の物質が入ってたのが発覚、ということになります。つまり、きちんと確認していれば出荷を防げた可能性はあると私は考えています。
適切な品質管理を行ったにもかかわらず微量の想定外物質が含まれていたということであれば、他社製品にも同様のリスクがあることが想定されますが他社は問題ないと発表しています。意図しない成分が見抜けるくらいの量入っていればやはり気付くと思うので、小林製薬はそこに対する管理が不十分だったのでは、という推測に至ってしまいます。

www.newsweekjapan.jp

仮にプベルル酸などの「意図しない成分」が簡単に見抜けるくらい「意図した成分」に対して大量に入っていたなら、それを簡単に見落とすとは思えません

肝心の小林製薬の品質管理ですが、以下の記事に取り上げられているように、ヒヤリハット的なことは起きているようです。大きい事故等が起きる前段として、ヒヤリハットが起きやすい状況というのが考えられます。ヒヤリハットが起こること自体は珍しくないとは思いますが、そこに対してどのくらい対処していたのかは重要と感じます。

www3.nhk.or.jp

www3.nhk.or.jp

 

では実際にガバナンスはどうなっていたか。以下の記事がどこまで事実かは分かりませんが、あまりきちんと機能してなかったのではと推測されます。

friday.kodansha.co.jp


もちろん小林製薬は上場企業ですので、相応の体制が一応は整備されてはいるようです。ただ、整備した仕組みの元でガバナンスがきちんと機能していたかは、私は少し懐疑的です。

www.zakzak.co.jp

 

そもそもガバナンスで一番重要な点は何かというと、以下の記事で書かれているような「権限と責任の明確化」であると私は考えています。また、明確にするだけでなく、実業務においてもそれに沿った意思決定がされることが重要と思います。

www.tanabeconsulting.co.jp

組織運営において、権限と責任のバランスは非常に重要です。例えば、社内の生産性改善PJを担当しているAさんがいるとします。Aさんは責任のある仕事、ポジションに就いていますが、権限がありません。いかにAさんが頑張ってPJを推進し、会社が良くなるようと提案したとしても、実行力が伴わなければ、モチベーションに関わってきます。

一方で権限と責任を明確にしたからといって、権限がない人が意見を言ってはいけないというわけではないと考えています。特に日本ではボトムアップ的なアプローチを取るケースが多いと思われるので、メンバーの意見等を集約して業務を改善していくというのは重要と感じます。理想的な組織としては、以下の記事にあるようなメンバーが主体性になって取り組むような雰囲気であるかなと私は思います。

www.businesslawyers.jp

従業員は、自らの意思で現実を見つめ、課題に当事者として取り組み、課題の解決や組織の目標の達成に向けて、主体的に行動しようとする高い意識を持っている

まとめるとガバナンスにおいては、まずは権限と責任の明確化、そしてメンバーの意見の集約、が大事であるというのが取り急ぎの結論です。とはいえ「メンバーの意見の集約」と一口に言っても中々難しいものがあり、ある程度の取捨選択も必要になる場面は出てくるでしょう。ここら辺は別の記事で、もう少し深く考察してみたいと思います。