とあるIT屋の独白

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トヨタのカイゼンとDX

2023年の末から問題となっているダイハツの不正、最近だと豊田織機、その前は日野自動車と、近頃トヨタグループではコンプライアンスの問題がボコボコ出てきています。この状況ではトヨタ本社でも、こういったずさんなことが行われると疑われても個人的には無理はないかなと考えています。
ダイハツの件で個人的に気になったのは、この社長はトヨタ出身という点です。トヨタと言えば、それこそ現場を一番に重視する社風で一昔前はエクセレントカンパニーとして取り上げられることも多かったですが、そのトヨタの人材がここまで落ちたのかと感じました。

www.yomiuri.co.jp


豊田会長もトヨタの強みであった現場重視の社風が失われていってることに、危機感は持っているようです。ただ、豊田会長の危機感が、グループ全体に浸透してるとは2024年2月時点ではまだ言えない状態と私は感じます。

toyotatimes.jp

私が社長になる以前のトヨタは非常に官僚的で、一部の肩書きを持っている人たちが主権を持ち、現場ではなく、本社の机の上で意思決定がなされていた会社だったと思います。

ではトヨタの現場主義の思想がどのようなものであるか。もちろん人によって見解は異なるかもしれませんが、大野耐一さんの思想が個人的には一番トヨタらしいかなという感想です。
大野耐一さんは、いわゆるトヨタ生産方式の理論を作った人と言われています。理論的な面もそうなのですが、個人的には以下の記事にあるようないわゆる精神的な部分も大事かなと考えています。

xtech.nikkei.com

結果を急いでたくさんの課題を部下に課すなということも若い幹部には話している。大野さんは、現場に来ると1個しか言わず、翌朝には見に来てフォローしてくれた。怖かったけど、見てくれているという安心感があった。

 

数字の読めないやつは話にならない。数字が見えない現場もいかん。だけどな、数字しか見ないやつが一番いかん

トヨタカイゼンは、課題を一個一個地道に解決していくことが大事だと私は感じます。ここをないがしろにして、いくら手法的なことを実践してもあまり意味はないと考えます。
これは昨今話題になるDXについても同様と私は感じます。ツールや手法も大事とは思いますが、以下の記事にあるような、

logmi.jp

ずっと「もっと良い方法がないか」ということを試行錯誤し続けていくとか、デジタルに対応した組織に変えていく、文化を変革することはけっこう大きいと思うんです。そういう意味では、何かツールを導入して行動を変えることはすぐできるわけですけども、ちゃんと組織に根づくまではそれなりに時間がかかるし、それに合った組織に変えていくには、いろいろなところを変えなきゃいけない。

という点がまず大事と私は思います。トヨタカイゼンもDXも中身は違えど進め方としてはほぼ同様と考えられ、地道に課題定義とどう解決するかを繰り返すしか、ゴールにはたどり着けないように思います。
これをある程度体現してるのが、現状だとテスラなのかなと考えています。テスラの進め方は以下の記事にあるようなプロジェクトベースで、その課題に対して集まった人で判断して物事を進めていくというものになります。今はどうか知りませんが、イーロンがテスラに時間を割いてた頃は、彼自身もこのモブに参加していたようです。

logmi.jp

経営者はイーロンのような振る舞いをしろとは言いませんが、ある種の現場感的なもの無しで意思決定をするのは悪手になりうるとは感じます。もちろん経営者に限った話ではないのですが、最終的な判断のよりどころとなるのは自分の目で見たものだと私は思うし、そこを人任せにしてなんとなくで決めたり物事を進めるのは、やはり良くないなとは感じてしまいます。