とあるIT屋の独白

ITや経営について主に書きます

DX時代のシステム導入について考えてみる

今の時代、SaaSクラウドの利用が当たり前になってきて、何かシステムを使おうと思った時のハードルが一昔前と比べると、かなり下がっているように思います。それはすごく良いことではあるのですが、一方でちゃんと使いこなせているのか、というのは個人的にはけっこう気になっています。SaaSのメリットとしては手軽に解約できる部分もあるのですが、とりあえず使ってみてダメだったら解約して別のを試す、を繰り返していくのもちょっとどうかなとは考えてます。
また、少し前の記事ですが、SaaSの操作性が微妙とかツールが多い、みたいな感じで不満が溜まっていく状況になるのは、やはり課題かなとは感じています。

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もちろん、積極的に色々試してみること自体は良いことではあります。一方できちんと狙いを持って試さないと投資効果が悪い結果になるかなとは思います。以下の記事でも触れられていますが、

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ツールを運用管理するためのコストが膨らんでも、それに見合う効果があれば問題ないはずだ。しかし、課題を尋ねた質問で3番目に多かった回答は「成長の鈍化」だった。ツールに多額の費用をかけても、それが企業の成長に結び付きづらい状況になってきたことが読み取れる。

業務の生産性を上げることを意識しないと、ツール地獄になるリスクもあるように感じます。以下の記事にある通り、ツール等を導入すればすぐに効果が得られる領域が、少なくなってる面もあると感じます。つまり、単純に何かを試し続けてもいつまでも効果が得られない、といったことに陥る可能性もあるかなと感じます。

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作業を自動化するにしても、明らかにシステム化した方がいい作業については、既にほとんどがシステム化されているでしょう。残された作業は、本当はシステム化した方がいいかもしれませんが、頑張れば人手でできてしまったり、システム化するには要件定義やらが複雑で人の経験に任せてしまっていたりというものがほとんどです。

複雑な業務等をきちんと要件定義するのは、かなり難しいと思います。そもそも、その業務に対する深いドメイン知識が要求されるだろうし、業務をよく知らない外部のベンダーなどに依頼してシステムを作らせたとして、上手くいくのかという話にはなります。

そこで、DXの文脈が出てくると思うのですが、DXは単にツールやシステムを導入するという位置付けではないと私は考えています。前にこのブログでも、ユーザの体験をいかに良くするかという観点を書きました。とはいえ、体験を良くするための要件定義をどのようにするかというのは、かなり難しい領域だと感じます。精神論にはなってしまうのですが、以下の記事に書かれているような、

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「人」や「プロセス」に働きかけていくには論理的な正しさだけでなく、「必要性の理解」や「意思の強化、意欲の引き出し」といった感情への働きかけが必要とされる

というのは、その通りかなと感じます。論理でみんなの納得が得られるようなものなら、すでにシステム化されてるでしょう。論理だけでは推進できない部分が、DXの主領域なのかなと私は思います。
トップダウンにしろボトムアップにしろ、システム化の意義や目指すべき姿を、みんなで共有しないと、より良い体験を生み出すのは難しいように感じます。もちろん、ロジカルな部分が大事なのは言うまでもありませんが、一方で人間的な側面により目を向ける必要性が高まっているようには感じます。