とあるIT屋の独白

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分配政策について考えてみる

岸田さんが首相になってから「分配政策」なるものが、注目されています。与党も野党も政策の内容に多少違いはあるとはいえ、日本の政治家の多くはこの分配政策という方針に賛同しているという状況かなと思います。もちろん色々な意見はあるとは思いますが、個人的にもこの分配政策という方針は、現時点で取れる選択としては妥当だと考えています。ということで、妥当と思われる背景や私見などを今回書いてみます。

分配政策の内容の前に、まずは少し背景的な経済の話から書いてみます。マクロな経済において重要な要素になるのが「人口」です。当たり前の話ですが、人口が多ければ多いほど経済が拡大する余地が大きくなります。それは働き手が多くなるので、その分GDPも増えるからです。GDPが増えるということは、得られる税収も多くなりますので、この状態の時は国の経済全体が右肩上がりの傾向になります。

data.wingarc.com


さて、日本はすでに少子高齢化の時代に突入していて、直近で人口が増える見込みはほぼ無いと言えると思います。現状では以下のようなアンケートにある通り、子供を産み・育てるというモチベーションがある状態とは言えません。さすがに、地獄は言い過ぎ感はありますが、金銭面・時間面でそれなりの余裕がある世帯ではないと、厳しい感があるのは現実でしょう。

www.businessinsider.jp

 

では、なぜこのような状態になるまで放置されていたか。今のような少子高齢化になるだろうという予測は、50年前にすでにされていたわけです。50年もの間、なぜ危機感を持たれなかったのかというと、下記の記事にあるような
「人が減ったらとにかく頭数を増やせばいい」
思想から脱せなかったという意見になんとなく共感します。記事中にある通り、減少トレンドの時は
人口が減少して社会保障やインフラの負担が上がるので、それに伴って収入を増やしてやらないことには、労働者の生活はいつまでたってもラクにならない
状態になるので、賃金を減らしてコストカットするのではなく、賃金を増やしていかに生産性を上げるかという方向に、どうシフトするかというのを考えないといけません。

www.itmedia.co.jp


人口が増えている状態なら、極論は分配政策はやる必要がないかもしれません。なぜなら人の頭数が増えるので、その分GDPも増えていくからです。ただ、人口が減少トレンドにある今、人が増える前提で考えているような政策は成り立たないので、まずはいかに一人当たりの所得と生産性を高めるかという方向性にしていかなければなりません。

ということで、今の近々の課題としては所得の底上げなわけですが、この所得の底上げのための政策分配政策と言っても良いでしょう。政府もこれを意識していなかったわけではなく、前に私が書いた記事にある通り、アベノミクスでも所得の底上げを実現することで成長につなげるというビジョンはありました。この分配政策は第二の矢で実現されるべきことだったのですが、以下の記事にある通りそれが十分に果たされず、中途半端に終わってしまいました。

toaruit.hatenablog.com


今、与党も野党もやろうとしているのが、この第二の矢の部分です。ただ、以下の記事のような分配よりも成長が必要という意見も、一方ではあったりします。

www.nri.com


もちろん成長はさせなければいけないのは同意です。では、現時点で日本企業が成長して諸外国に勝てる状況なのか。あらためて振り返ると、分野によっては強みがあるのですが、強かった時代の勢いはなくなってると言わざるを得ないと思います。

海外勢が成長していったという要因もあるにはあるのですが、日本の教育や基礎研究の弱体化はやはり要因の一つとして挙げられるでしょう。日本が強かった時代の貯金をけっこう使ってしまっていて、また構築しなければいけない状況にあると思います。企業や自治体が投資できる環境を作るためには、内需を拡大させ、きちんと金を稼いで投資に回せる状態にすることが急務だと私は感じます。
内需を拡大させるためには、なるべく多くの人が需要が増加する、つまり金を使う状態にしなければいけません。なので、成長のためにまずは投資が必要、投資のためにはそのための金が必要、そのための金を生み出すためには需要が必要、だから分配が必要というのは方向性として妥当と考えています。