とあるIT屋の独白

ITや経営について主に書きます

システムの開発とエンジニアの雇用

以前にこのブログでも取り上げた終身雇用について、今回はシステム開発に絡めて書いてみたいと思います。というのも、システム開発の体制と日本の雇用は関連していると私は考えています。日本の雇用のやり方やITの活用が変わろうとしてる今、システム開発の体制も変わっていくのではとみています。
さて、終身雇用は事実上崩壊してると言っても過言ではないですが、最近は終身雇用とセットである年功序列型の給与モデルも、見直されつつあります。下記の記事にあるように、ソニー三菱ケミカルなど大企業において年功廃止の流れが出てきています。

allabout.co.jp

 

年功序列型の賃金がなくなってくるとなると、企業は社員を在籍年数ではなく、就いたポジションであったり責任範囲であったり成果で評価せざるを得なくなります。ということは、企業にとって成果に貢献しない人材については、給与が下げられることが今後起こってくるだろうし、正社員だからクビは切られないという保証もないでしょう。もちろんアメリカみたいに、がんがんクビにするのはやりすぎと思いますが。。
システム開発について、終身雇用の時代は自社にエンジニアを抱えるのはメリットが少ない、というのは分かります。プロジェクト毎に必要となる人数は異なるし、何よりITがビジネスのコア領域として認識されてない時代だった、というのもあると思います。ただ、今の時代はどの業界であってもビジネスのコア部分でITが必要となる場面があるし、システム開発をベンダーに丸投げするというのは、コア領域を丸投げする行為になってきてると感じます。
また、エンジニアはスキルがあれば転職しやすい職種です。ので、現状であれば過去の終身雇用に縛られることなく、ある程度自社にエンジニアを確保するのは企業にとってリスクはそこまで大きくないと感じます。賃金も年功序列ではなく出した成果で評価することができれば、例えば働かない社員がずっと高い給料のままい続けるといったことも、少なくなるでしょう。
とはいえ、全ての開発を自社でまかなうのは現実的ではなく、ベンダーの仕事自体は残り続けると思います。ただそこで、何がビジネスのコア部分で何が自社のノウハウとして貯めなければいけないか、という見極めが大事と考えています。そこをベンダー任せにしていては、ITを自社で使いこなせない状況は解消しないし、今の時代にITの活用なしでビジネスを大きくするのもけっこう困難とは思います。

天才の創造性を政治に活かすためには

以前にこのブログで、天才の創造性をどう活かしたら良いかについて書いてみましたが、

toaruit.hatenablog.com


今回は少し政治にフォーカスをあてて考えてみたいと思います。台湾ではオードリー・タンのような超天才が政治の中枢にいて色々な取り組みを行ってますが、日本ではまだまだ難しいかもしれません。それは日本に天才がいないからというわけではなく、そもそも日本天才を必要としている組織構造にまだなっていないからと私は感じます。
では日本は今どのような構造なのか、ちょっと私見ですが書いてみます。政治に竹中平蔵さんが関わってくるようになって行われた政策の方針が以下の記事にある「トリクルダウン」です。つまり、大企業や富裕層が豊かになればその余剰で投資が発生し、経済も豊かになるというものです。で、この政策をここ何年か続けてきて日本は豊かになったか、おそらく豊かになったと答える人は少数でしょう。

www.mag2.com


投資が発生しない状況下でのトリクルダウン政策の結果、何が発生するかというと「富の独占」になります。富を独占するものが投資をしないということは、いかに安く経営資源や労働資源を調達して利益を上げるか、というのが彼らの主眼点となってしまいます。少し前に、政府がオリンピックのための開発エンジニアを、民間ではあり得ない賃金で採用しようとしたことは記憶に新しいところです。政府や大企業は今もこの論理で動いているので、この構造を変えない限りは天才がいたところで安く買い叩かれるだけとなるので、そもそも天才がいたとしてもこういった組織とは関わりたくないと感じるでしょう。

今はIT活用のモデルケースとして取り上げられている台湾ですが、一昔前の台湾でも今の日本と似たような状況であったわけで、それを変えようとしたことがオードリー・タンの抜擢へとつながったわけです。オードリー・タンを大臣に抜擢したのが「蔡玉玲」という政治家で、彼女がいなければおそらくオードリー・タンが政治に入ることになかったように思います。

crea.bunshun.jp


日本に今必要と思われるのはオードリー・タンではなく蔡玉玲で、ちゃんと能力がある人を引き上げられる権力を持った人です。日本でも「未踏スーパークリエータ」という素晴らしい取り組みがあって、私なんかは到底かなわないような天才が毎年のように発掘されています。こういった素晴らしい人材を、政治の世界で重要なポジションと高い報酬を与える、これをやるだけでも日本のITであったり政策は、随分変わるだろうと私は感じます。

www.ipa.go.jp

仮説検証とアジャイル

アジャイルについて、私のブログでも何度か取り上げました。そこではエンジニア自身が限られた工程だけをやるのではなく、ビジネスと対話しながら一人一人が開発を自己完結させることが大事と書きました。今回はなぜこういった意識が大事かというのを、もう少し書いてみたいと思います。
まず前提としてアジャイルでの開発はスプリントと呼ばれる、数週間の単位でリリースできるものを開発していくスタイルで進めていきます。これは開発のスタート時に全ての要件が決まらないし変動しうるという前提にたち、要件が決まっている部分であったり、重要な機能から作り込むという目的があります。
もちろん、この目的も大事ではあるのですが、一方でリーンの考えである「仮説検証」のサイクルを回すことも、アジャイルを効果的に回すためには大事と私は思います。以下の記事ではリーンとアジャイルを別の考えとして扱っていますが、個人的にはリーンとアジャイルはセットで進めないと、なかなか効果を発揮しないのではと感じます。

www.blockchainengineer.tokyo

 

携わる人がある種の仮説を持って開発に取り組まないと、作った機能はそもそも正しいか、次に何を作れば効果が出せるか、といった思考のサイクルが回らず、ウォータフォールと変わらず言われたものを作るといったことが、起きてしまうのではないでしょうか。アジャイルにも色々なプラクティスがありますが、ただ、漫然とプラクティスを実行したりスプリントをこなすことだけで、アジャイルをやる意味はあまりないと思っています。
その点だと、下記の記事にある通りアジャイルとは組織論であって、いかにチームメンバーが良いプロダクトやサービスを実現できるために、仮説検証を実践できるかという仕掛けなのではと思います。

a-suenami.hatenablog.com

 

下記の記事にもありますが、
「一昔前は、会社の事業はそれほど流動的でなく、一人の管理職が永きにわたって活躍できた。だが、現在の企業は本質的に事業が流動的であり、脆弱である。また、求められる能力の変化が大きい。」
というのが今のビジネスの環境です。事業が流動的である以上、その流動的な流れに対応できる開発体制が望ましいと私は感じます。流動的な流れに対応する一つの手段が「仮説検証」であって、開発する機能はもちろんのこと、チームの体制や人材の配置を含めて、きちんとサイクルを回せることが大事なのかなと感じます。

blog.tinect.jp

 

学校に行かなくてよいという価値観とカイゼンの精神の対立

少し前から学校へ行かなくてよい、と主張するYouTuberが世間をにぎわせてますね。もちろん、心身をすり減らしてまで行く必要はないと私も思いますし、諸々の事情で学校へ行けなくなった人の受け皿は必要とは思います。ただ、学校は行かなくてよいものかと言われると、私的にはNOです。今回は少し、私の考えを書いてみたいと思います。

なぜ学校は行かなくてよいという意見に反対なのか、それは毎日こつこつと通うということは非常に大事と私は考えてるからです。毎日こつこつと何か物事を行うのは、将来重要な資産になると考えてます。それを学校なんか通わなくてよいと発信するのは、毎日通ってる人に対して失礼なことと感じます。
では毎日通わなくてもよい、学校なんか行かなくて自由にしてよい、となったらどうなるでしょうか。何か問題や苦しいことがあったら、逃げてもよいということにつながって、最終的には思考停止につながると私は考えています。もちろん、ほんとに苦しいときは逃げるべきなんですが、ただ逃げるにもタイミングが大事です。ちょっとのことで逃げると、物事の本当に大事なことを見失うと私は思います。そもそも逃げる目的は、自分が危機に陥るリスクを回避することであると私は考えています。何がリスクか判断出来ない人が、ただ逃げることを覚えるのは思考停止でしかないのではないでしょうか。

一方で今問題だらけの学校に行ってもしょうがないのではないか、という意見もあると思います。たしかに、学校教育は問題だらけだと私も感じますし、そこに価値があるかと言われると自信を持ってYESとは言えません。ただ、私は思うのですが、問題があればそれは放置せず解決しなければいけないし、そこから逃げることは将来につながるかというと、そうは思いません。大人の責任はもちろん大きいですが、何より学校は子供が主役なので、きちんと大人と子供で問題解決できる枠組みが必要と感じます。
日本は下記の記事にあるような「カイゼン」の取り組みが、ここまで成長してきた一つの要因として挙げられます。カイゼンの第一歩目は問題の把握です。何よりまずは問題意識を持つのが大事と考えています。

www.ashita-team.com


今問題がある学校という基盤を「行かなくてよい」と言って捨ててしまうのか、それとも問題と向き合って良くしていくのか。私だったら後者の道を選びたいと感じます。多くの若者がまだ学校に毎日通ってますし、もちろん彼らも学校には何かしら問題があると思ってるでしょう。だから、その問題意識を何とかポジティブな方向に向かせなきゃいけなくて、やはりそれは大人の役割になるのかなと私は思います。

EDRとは何か

最近セキュリティ関連でちょくちょく見かける「EDR」というワード。今回はこのEDRについて少し調べてみたので紹介します。
EDRとは「Endpoint Detection and Response」で、端末に対して何かセキュリティの攻撃が発生した時に、それを検知するのを目的としています。似たようなツールとして、EPP「Endpoint Protection Platform」が挙げられます。EPPはいわゆるアンチウイルスソフトで、セキュリティの脅威から端末を守るものとなります。
ここらへんの違いの詳細は、下記の記事にまとめられています。

www.jbsvc.co.jp


EDRが注目されている背景としては、EDPだけではセキュリティの脅威を保護しきれないという環境になってきたからです。いわゆるゼロトラストの前提でセキュリティを考えなければいけなくて、端末の保護に関して信頼をおかないというスタンスです。なので以前に私のブログで紹介した、端末のアプリケーション管理等を行うUEMや、今回取り上げたEDRが注目されてきてます。

www.nri-secure.co.jp

 

さて、実際にEDRを使われた感想的なのが、下記の記事にまとめられています。例えば端末に何か起きたときのログ収集とか、すぐに行えるらしくて、きちんとセキュリティ担当置いてる会社なら有効活用できそうです。ただ値段は安くはないみたいですが…。

qiita.com

 

真面目に頑張っても評価されない社会で

できれば楽して金を稼ぎたい、私だってそう思うし、そう思っている人は多いでしょう。真面目に頑張っても大して給料が上がらない、そういう状況だったら人は頑張る気はなくすでしょう、当然です。以下の記事にあるような、不真面目にやってた方が楽だし給料もらえるし、いいんじゃないという気持ちになるのは必然でしょう。

life-shift.blog


さて、その必然が続いてしまった日本ではどうなったか。巷では楽に稼げるとうたってる怪しい情報商材だったり、いい加減な仕事をして金をもらうフリーランスだったり、そういう人にそそのかされてバカを見る人だったり、そんなのを見かけるのも普通になってきました。間違いなく社会は蝕まれてる方向にいってる気がします。じゃあどうすれば良いかというのを少し思考してみます。

そもそも「真面目」とは何かというのを、もう少し深掘りしていきたいと思います。個人的には仕事で真面目であるというのは、「言われたことを文句を言わず取り組む」ことと同義と思っています。ここで注意したいのは言われたことを頑張って取り組むものの、成果が出せるかは別問題ということです。そりゃ人によって適性が違うんだから、割り振られた仕事をどんなに頑張っても成果が出ない時は出ないものです。適性が合った仕事が割り振られた人はラッキーですが、そうでない人は成果が出せないまま給料が上がらないままの負のループに陥ってしまいます。
また、一方で成果を出しているけど給料を上げない、いわゆるブラック企業の存在も大きいでしょう。真面目な人は結局それに反抗せずに仕事を続けてしまうので、気づいたら他の会社の人と給料に差がある、という状況も全然ありうるでしょう。


少し私のことを書くと、私は20歳代の前半くらいまでは自分のことある程度真面目という自負があって、大学ちゃんと卒業して新卒で会社に入社する、ここまではまぁ良かったと思います。ただ、新卒で入社した会社の仕事はしばらくは続けてたのですが、やはり自分に合わないと感じてしまい、結局ツラくなって1年くらいで転職しました。2社目は数年続いたのですが、苦手意識があったマネジメントを求められてくるようになり、このまま続けてもツラくなるだろうと思ってやっぱり転職してしまいました。
そんなこんなで転職を何回か繰り返して、気づけば一般的な認識からは不真面目なほうにカテゴリーされる部類に入ってると思います。一般的な私の年代で真面目な人のイメージで言うと、部下を持ってる・結婚してる・人付き合いをそつなくこなす、こんなところでしょうか、残念ながら私は1つも満たしてません。でもいいんです、自分の適性はある程度分かっているつもりで、社会から求められているようなことを無理して続けて真面目になるよりも、自分の適性に合った生き方の方が性に合っていると感じるので。
でもこういう生き方をしている成果として、ある程度変化に対応できる力は得られたと思ってます。自分の強みを活かしてこれた成果があり、そこに対してネガティブな感情はほぼないので、次の場でも自分の強みが活かせることができると考えられるからです。たぶん自分が辛いことを我慢して続けてたら、おそらくそれを次に活かせることが出来なかったようには思います。


では、今真面目にがんばってる人はどうすれば良いか。もちろん、私の真似をしてやりたいこと出来なければ会社を辞めてしまえ、と言うつもりは毛頭ないです。辛いことでも我慢して続けるということはある種社会で生きる上では大事なことですし、こんなこと書いてる私だって、そりゃ好きなことばかりやってるってわけでもないし・・。
個人的には、その人自身というよりは、やはり周りがきちんとその人に対して適性に合った仕事を割り振ってあげることが大事と思います。例えば100ある仕事のうち20とか30だけでも、その人のやりたいことや好きそうなことをやらせてみる。そこで高い成果が出せれば会社のためにもなるし、真面目な人はそういった仕事を割り振ってもらえた恩に報いてくれると私は考えています。

今これだけ不真面目な人が世に蔓延っている中で、真面目な人は貴重な人材と私は考えています。そこでその人をボロ雑巾のように使いたおしてしまうのか、ちゃんと成果が出せるように導いてあげるのか、周りの人にかかってると思います。少しでも真面目な人が報われるような社会になっていくことを切に願っています。

AppleとGoogleのオンライン広告(2021年5月時点)

このブログで何回か取り上げたオンライン広告、なかなか動きが激しい業界ではありますが、現時点での動きや感じたことまとめてみます。
昨今のオンライン広告で影響力のあるメインプレイヤーは、AppleGoogleでしょう。もちろん、例えばFacebookとかもオンライン広告で収益をあげているのですが、どちらかというとAppleGoogleの出方で今後の戦略が変わってしまうので、どちらかというと振り回される側な感じがします。やはりハードやOS、ブラウザあたりを押さえている会社は強いですね。
オンライン広告ではCookieやアプリで取得できる端末IDを上手く使うことが、ターゲティングを行う上で大事ですが、Appleがここら辺の規制を強化しています。すでにSafariではサードパーティCookieは使用不可で、今年の4月には端末IDもユーザの許可なく使用できない仕様としています。

iphone-mania.jp


AppleのCEOクックは、ターゲティングを無許可に行うようなアドテクは悪で、これを排除することがユーザ体験をよくすると主張しています。

jp.techcrunch.com


一方でAppleは自社のプラットフォームでは、プライバシーに配慮するという建前で、独自にユーザー情報を収集してるわけです。もちろんアドテク業者を排除することでユーザー体験を向上させる一方で、より自社プラットフォームへの囲い込み的な裏テーマも、あるかなとは感じます。

gigazine.net


一方でGoogleサードパーティCookieの代替として進めてる「FLoC」ですが、こちらはあまり旗色がよくないようです。プライバシーに配慮した上でユーザ情報を収集する方針だそうですが、なかなか周囲のベンダーからは賛同をえられてないみたいです。

internet.watch.impress.co.jp


Googleの収益の多くを占める広告収入ですが、ターゲティングなしで維持できるかというと、怪しい状況なわけです。なので今のところはAppleの方針が優勢な感じはしていますが、Googleの巻き返しにも期待はしたいです。