とあるIT屋の独白

ITや経営について主に書きます

SESの問題点について考えてみる

SESの問題について、TwitterなどのSNSのIT界隈では議論になりやすいですよね。ITの現場ではSESの人が普通にいるし、私もそういう現場で働いてて思うところはやはりあります。ただ、「SESは悪」みたいなことを、根拠を明示せず言うのは違うと感じるし、問題点があればそれについて具体的にどうするべきかを議論すれば良いと思ってます。とは言え、なんだかんだ論点は複数あると思うので、今回は私的に気になった点をいくつか挙げて、感じたことを書いてみます。

まず、SESとはなんぞやという話ですが、これは人によって考え方が違うだろうし、確固とした定義もないです。ただ、なにかしら定義がないと話も進めにくいので、この記事では前に書いたように、

toaruit.hatenablog.com

主に準委任契約でシステムの案件を受ける事業者、としたいと思います。この前提で各トピックについて、感じたことを書いていきます。

 

◼️給料が低い

SESの会社に入ると給料が低い、という話はチラホラ聞きますが、そもそもSES以外の会社でも給料低い会社なんていくらでもあるので、これをSESの仕組みのせいにするのは、個人的には懐疑的です。
SESは、会社が隠すことをしなければ自分の単価を知ることができるので、市場価値をある程度把握できる面があるのはメリットと感じています。そこで、自分の給料と乖離があれば、転職するなりフリーランスになるなりして、対策はたてられるのではと感じます。

 

◼️偽装請負

準委任契約における偽装請負も、たびたび問題として聞くことがあります。偽装請負とは以下の記事にある通り、

www.nearshore.or.jp

契約書のタイトルは請負契約または準委任契約としておきながら、実質的には発注者(ユーザー企業)の指揮命令を受けて業務を行うこと

を指します。
では、この「指揮命令」ですが、何をもって指揮命令とみなすか正確に判断できる人は、ほぼいないのではと私は考えています。仕事の話をしちゃいけないというわけではないけど、かといって時間拘束や契約外の依頼をすると、それは偽装請負とみなされるリスクがあります。

enterprise.goworkship.com

もちろん法律なので守らなければいけないのですが、どのラインなら違反かという判断が人によって分かれそうな状態は、あまり良くないでしょう。なので、あまり問題とは感じずに偽装請負的な仕事のやり方を、してしまう面はあると思います。
これはSESの仕組みというよりは、どう法制度の認知を広げたり改善していくかという話になるかなと感じます。

 

◼️善管注意義務

準委任契約で契約する以上は、基本的に善管注意義務を負います。ただ、Twitter等を見てると、SESは人をとりあえず現場に入れりゃいいみたいな考えが伝わってきて、これは本当に良くないとは思います。
SESは準委任契約が前提となるので、本来的には依頼する内容と、その依頼を達成できるかという観点で案件を受けるか判断すべきと私は考えています。ただ、現状だと「Javaができる人」とか「AWSの経験がある」とか、依頼内容というよりは単純に技術スタックで判断してる雰囲気もあって、それで善管注意義務が果たせるかは疑問に感じています。

 

◼️事前の打ち合わせについて

まずこれは私の考えですが、準委任契約についてその依頼内容を擦り合わせること自体は、問題ないと考えています。そもそも認識が合わないまま契約し、依頼内容を達成できず善管注意義務を果たせないのは、やはり不幸でしかないので。ただ、そこでその人の経歴を面談のように吟味することは、やはりグレーだと思ってます。
もちろん依頼主からしてみたら、仕事をお願いする人がどんな人か気になるのはメチャメチャ分かりますし、受注側が信頼してもらうために経歴を公開することは、普通にあるでしょう。ただ、その経歴によって契約を判断するのではなく、あくまでその人が依頼内容を達成できるかが最重要なので、その目的がブレないようにするのは大事です。なんか経歴ばかり独り歩きして、経歴詐称みたいな問題が出てるのは本末転倒な感じはしています。(もちろん経歴詐称すること自体は論外ですが)

 

◼️再委託に関して

受注した業務に関して、自社だけで対応できない部分を別の会社に再委託するケースはあるでしょう。予期せぬことはやはりあったりするので、再委託自体は顧客と合意があれば別に悪いことではなく、必要に応じて行うことは問題ないと考えています。ただ、以下のBIPROGY社の件のような、顧客に無断で再委託を行うケースは悪だと思います。

www.itmedia.co.jp

とはいえ、無断の再委託に関してはけっこう行われているのではと思っていて、私が昔いた現場でも、おそらくそのようなことが行われていたと考えています。すごく良くないのは、再委託先の業者が、自社でなく受注した元請けの会社名を名乗るべきみたいな風習です。私も昔の現場で、外部のベンダーが再委託していると知らずになんでメンバー間で情報連携されてないのかみたいな感じのことを聞いたのですが、よくよく掘り下げると実は別会社だったみたいなことはありました。特に若い人がSESで来てたりすると、やはり彼らのせいにはできないので、これはやっぱり業界全体で是正すべきことだと感じています。

 

さて、諸々思うところを書きましたが、SESを準委任契約でシステムの仕事を受ける事業者と位置付けると、準委任契約自体は法律で決められてるものですので、それ自体は悪ではないと考えています。ただ、準委任契約が本来意図していないようなやり方で、人を派遣するようなやり方は、いくら法律を破ってないと主張しても、やはりそれは違うのではと感じます。
法律を破らなければ何をしてもいいという考えではなく、真っ当な事業として不幸な人が生まれない為にどうすればいいのかというのは、あらためてIT業界全体で考える必要があるとは思います。