とあるIT屋の独白

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2014年のウクライナの出来事をロシア寄りの視点から考えてみる

今年(2022年)に起きたロシアとウクライナの戦争、本当に衝撃的で日本も他人事じゃないと感じた人も多いのではないでしょうか。改めてロシアは油断ならない国で、北方領土を押さえられている日本も警戒すべきとは思います。
プーチンウクライナ侵攻を行ったのは許されないことではありますが、そもそも、なんでプーチンがこんなことしたのかというのは、あまり考察されてないかなと感じました。侵攻した理由は以下の記事にざっと書いてあって、

www.iza.ne.jp


要約すると、以下の三点が主なものになるかなと思います。

ウクライナ政権を「ネオナチ」などと称し、ウクライナの非ナチス化を目的とする。
② 親露派武装勢力が実効支配するウクライナ東部の住民保護。
NATOの東方拡大を阻止すること。

③については、完璧にロシア都合なので擁護のしようが無いです。①と②についてもパッと見言いがかりしか見えないのですが、ただ「ネオナチ」と「ウクライナ東部」については、ウクライナのここ数年の国内事情が大いに関わっていて、ある程度調べると100%嘘の言いがかりでもないように私は思いました(それでも言いがかりには違いないですが)。なぜ、プーチンが①・②のようなことを言い出したのか、欧米側の視点ではなくロシア側の視点に立って考えてみるのは、一つありかなと感じました。
ということで、今回はウクライナの情勢悪化のトリガーとなった2014年の出来事で、個人的に気になったものを取り上げ(全部取り上げたらキリがないので・・)、少しロシア寄りの視点から見てみようと思います。

<前提>

・以下は少し古い論文(2011年)ですが、ウクライナは東西でだいぶ雰囲気が異なる国であることが見てとれると思います。西は欧州支持で主にウクライナ語を使用、東はロシア支持で主にロシア語を使用しています。なので、ウクライナ全部が必ずしも欧州支持ではない、ということが前提にあります。

現代に見る東西の狭間のガリツィア、ウクライナ

・今回は欧州やアメリカの関与については、あまり触れないこととします。それを書き出すとほんとカオスになりそうだったので、ウクライナとロシアのことについて主に書くこととします。ただ、少し調べると欧州やアメリカの関与の仕方は褒められたものではなく、事態悪化の要因として見逃せないものと私は思います。そんな彼らが、ウクライナを全力で応援してるとか、したり顔で言ってるのは、個人的には非常に違和感を感じています。

<2014年の出来事(抜粋)>

■マイダン革命(〜2014/2/22)

ロシアのクリミア侵攻の前にウクライナで起こったのが、「マイダン革命」と呼ばれる、親ロシア派の政権転覆です。詳細は以下のWikipediaに詳しくまとめられていますが、事の要点だけ抜粋します。

ja.wikipedia.org

・当時の大統領だったヤヌコーヴィチは、親ロ派です。彼の経歴は以下のページにまとめられています。もちろん、彼はロシアの後ろ盾があったわけですが、選挙では欧州派と接戦となっており、全く不正が無かったとは言いませんが、東部を中心にそれなりの支持はあったと思われます。

ja.wikipedia.org

・ヤヌコーヴィチはEUとの協定を進めていましたが、ロシアから圧力をかけられ、断念しました。

EUの協定を断念したことに対して、欧州寄りの国民が猛反発し暴動が起きて政権転覆につながりました。ちなみにその時の暴動を主導したのが、プーチンが言うところのネオナチで「右派セクター」と言われている組織になります。

ja.wikipedia.org

■欧州派の暫定政権によるロシア語の公用語法廃止の提案(2014/2/23〜)

あまり記事等で取り上げられてないのですが、マイダン革命後の暫定政権が一番最初にやったことは「ロシア語の公用語廃止」の提案です。暫定政権大統領のトゥルチノフが発表して、これも後のクリミア併合や東部独立の引き金の要因になってしまったと思われます。
以下のトゥルチノフのページにもありますが、

ja.wikipedia.org

当時はこの提案にEUも難色を示したそうです。

なお、ヤヌコーヴィチ政権がロシア語も公用語と認められうる公用語法を施行していたところ、最高議会と同大統領は同23日に同法廃止を決定して、国内ロシア語圏においてはこれに激しく反発する勢力が現れることとなった。同法の廃止がノヴォロシア人民共和国連邦が5月12日にウクライナからの独立を宣言する契機となっており、EUも同法の廃止については、マイノリティの権利が守られるべきであるとして懸念を示している。

■クリミアでの対立とロシア併合(2014/2/26〜)

マイデン革命の余波で、クリミアでもタタール人と呼ばれる暫定政権側と、コサックと呼ばれるロシア側で対立が起きました。この対立を契機にロシアがクリミアに侵攻して、一気に併合まで行った流れになります。

ja.wikipedia.org

■東部の独立(2014/3/1〜)

2022年まで至る東部の問題も、この時に発生しています。以下のページにある「親露派の抗議者たちは、2014年3月1日から6日までドネツィク州庁舎を占拠」が契機になっています。ちょうど、マイダン革命の立場を入れ替えたような事変が、東部で起きたわけですね。

ja.wikipedia.org

東部で占拠した親ロシア派勢力を排除しようと、政府側も戦力を送って紛争になります。その時に生まれたのがプーチンが言うところのネオナチで、今ちょくちょく話題になってる「アゾフ大隊」です。アゾフ大隊は、この東部の紛争をきっかけに、その後なぜか政府軍に編入されます。
ちなみに、2022年の戦争で大きな被害が出たマリウポリをアゾフ大隊は拠点としていて、ロシアが重点的に攻めてる理由の一つではあると考えられます。

ja.wikipedia.org

なお、アゾフ大隊については、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)もその振る舞いを問題視していて、評判はよろしいものではないです。

www.globalmacroresearch.org


<雑感など>

少しロシア寄りの視点から、かいつまんで2014年の出来事を紹介しましたが、こうやって見るとマイダン革命を皮切りに、ウクライナ内で燻っていた対立が一気に表面化した感じはあります。それが、ウクライナへのロシア介入の大きな口実を与えてしまいました。なので、最初に挙げたプーチンの言いがかりですが、100%正しいとは言えないまでも、それっぽいことがウクライナ内で起きていたようで、今に至るまで尾を引いていると感じます。
今後、ロシアがヤケになって日本にも攻めてくる可能性も、もちろんゼロではないでしょう。その為の防衛はきちんと検討すべきと感じます。ただ、我々一人一人が今意識すべきことは、国内で余計な対立を煽らず「寛容性」を持つことだと考えています。幸いにも日本ではウクライナのような壮絶な対立が無く、すぐにロシアが攻め入る口実はそこまで無いと言えるでしょう。今現在の日本において、この寛容性はかなり高いと思っていて、それは日本の強みであると私は感じます。

日本人の考え方も時代によって変わるだろうし、その時内戦みたいになる未来も最悪のケースとしては考えられると思います。最悪のケースにならないために、マイノリティへの配慮など寛容性を改めて意識することは大事だし、その意識がこの先の戦争回避につながると私は信じています。