とあるIT屋の独白

ITや経営について主に書きます

ジャック・ウェルチ戦略の終わり

年末に近づくにつれて、企業の動きも慌ただしくなってきました。ブリヂストンは事業売却を発表するし、オリンパスも祖業の顕微鏡事業を分社化するなどです。また少し前ではありますが、GEが事業別に3社に分割するというニュースがありました。一昔前までは、GEはアメリカを代表する企業であり、経営学の教科書にも出てくるよう感じだったのですが、世の中は変化したなぁと感じます。

www.bloomberg.co.jp


GEと言えば、代表的な経営者としてジャック・ウェルチが挙げられます。彼が経営に携わっていた頃のGEは、それこそ今で言うところのGAFAの一角に入るようなレベルだったと、個人的には感じています。そんなジャック・ウェルチの戦略は「選択と集中」で、市場でナンバーワンかナンバーツーの事業に絞って、勝負するという方針でした。

online.sbcr.jp


市場でトップを取れる事業に投資もしくは買収でポートフォリオに組み入れ、それ以外は売却等するというのは、たしかにシンプルな考え方です。実際にそのやり方で上手くいっていたので、その時は合理性があったと感じます。
ただ、そのやり方が今の時代に合っているかというと、やはりちょっと違うなぁという気はします。もちろん、今の世界でトップの企業もM&Aは頻繁に行っていますが、その観点は少し違うように感じます。例えば日立なんかは例として分かりやすいのですが、まずは「Lumada」というIT基盤が軸としてあって、このIT基盤が活用できる事業を選択しています。(例えば自動車や発電関係の分野だったり)

www.provej.jp


逆に現状軸がイマイチぼやけている東芝は、GEと同様に分社化するのではという話も出ています。元々、東芝半導体メモリが利益の稼ぎ頭だったわけで、これを軸に位置付けていれば、今とは結果が違ってきたようには思います。それを会計の不祥事であったり、現金を得るためにフラッシュメモリの事業を売却したりで、とどのつまりは東芝本体に残った半導体事業とメモリ事業も結局は分割されるのではという状況です。

やはり軸が作れていない状態で、財務の結果部分だけ見て経営判断をするのは、今の時代は悪手になりうるということかなと感じます。

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また、自社の事業の将来性が見えなくなってきた時は、時には方向変換も大事です。例えばFacebookは「Meta」になりメタバースに注力すると表明しました。現状でも業績は悪いわけではないのに、今の時点で注力分野の方針を変えてくるところは、けっこう大きな決断だと思います。

IBMも元々強みだったハードの分野から、クラウドやソフトウェアの分野へ注力する軸を変えようとしています。Red Hatを買収したのは良い判断で、まだキャッシュがあるうちに注力分野を補完できる会社を取り込めたのは大きいですね。Red Hatの事業が今後のIBMのメインストリームになる可能性も、あるかなとは感じます。

jp.techcrunch.com

 

日本においても、メインストリームの事業以外は再編したり、また買収で主事業を補完したりといった動きは出てくると思います。大企業だから大丈夫ということはなく、自分の所属する事業が果たしてどうなるかという観点で、常に動静をウォッチしていく必要はあるかなと感じます。