前回、神戸製鋼の品質データ改ざんを評価という面から取り上げてみましたが、今回はコンプライアンスという観点で少し考えてみたいと思います。コンプライアンスが日本語に訳すと「法令遵守」となるわけで、この文字だけ見ると法律を守ってればよいのかと突っ込みたくはなるのですが、もちろん法律には違反しないけど不誠実な行為は社会的な批判をあびます。以前に本ブログでも書きましたが、
http://toaruit.hatenablog.com/entry/2016/09/19/224726
法律で書かれているのはあくまで最低限の決まりであり、それを守れば不適切な状態が生まれないかというとそうではありません。コンプライアンスという言葉の範囲をどこまで対象とするかは、議論がわかれると思いますが、少なくとも企業としては法令遵守に加え一般的に守るべきモラルについても意識する必要があります。下記の記事でいうフルセットコンプライアンスになります。
【特集:法令遵守がコンプライアンスではない~ パロマ事件の教訓】
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/special/176/index.html
今回の神戸製鋼の件もこのモラルについて、欠如していたのではとの指摘があります。
【久保利弁護士「神戸製鋼所はあまりに拙劣だ」コンプラ経営の第一人者が語る改ざん問題】
http://toyokeizai.net/articles/-/193711
ただ、社員のモラルを向上させろと言われても中々どういう施策をうてばよいか、分からないのではと思います。下記の記事によると、モラル的な部分は人間の直感的な面と理性的な面で判断していて、不正を行うことについても理性的な面が働いているのではとの観点もあります。つまり、不正を行う前提として、現状を考えると不正を行ったとしても影響が少なかったり気付かれないだろう、という思考が存在し、直感的にはまずいことであっても正当化されうるということになります。
【「人はどのようにして道徳的な判断を行うのか」】
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000000515/
結論としては、前回と同じになるのですが、社員の心理的安全性を担保するというのが施策の一つになりうるということです。つまり、直感的にまずいということをあえて正当化せずに、一度立ち止まって考えられる、ということが大事なのだと思います。
一つ日本での事例を挙げると、下記の記事にあるミスターミニッツの業績回復の例があります。元々、業績が低迷しており従業員のモチベーションの低さから離職者が出ている状態でした。トップダウンでの戦略落とし込みも上手くいかないという中で、社員のモチベーションを上げ、業績回復を実現しました。
【ミスターミニット「ダメ会社」が再生した理由】
http://toyokeizai.net/articles/-/168695?display=b
この例では自社事業の「適社性」を把握した上で、人員配置や評価を行ったことで、現場の実行力が上がったものとなります。記事中にもありますが、この適社性の把握は、自分たち「らしさ」とは何かを考えるということです。自分たちのらしさが発揮できるということは、つまりは直感的に「正しい」と思う行動が評価され、それが事業の結果にも結びつけられている状態になるのかなと感じます。